PaCCSC Annual Research Forum参加とPoCoG訪問の報告

PaCCSC Annual Research Forum参加とPoCoG訪問の報告

 

2018年3月16日

 

 今年も、J-SUPPORTのメンバーが、オースラリアの緩和ケア領域の多施設臨床試験グループであるPalliative Care Clinical Study Collaborative(PaCCSC)のAnnual Research Forumへの出席とUniversity of Sydneyを母体としているサイコオンコロジーの研究グループであるPsycho-Oncology Co-operative Research Group(PoCoG)に訪問致しました。

 PaCCSC Research Forumは今年で9回目を迎え、昨年に引き続き日本からも2演題の発表を行いました。ひとつは、J-SUPPORT1603試験(UMIN000025491)として実施している早期緩和ケア介入のRCTについて、国立がん研究センターの松本先生からご発表がございました。オーストラリアでもPearl Study(ACTRN12617000166370)として肺がん患者を対象に同様のデザインのRCTが進行中であり、早期緩和ケア介入の有用性については、米国から報告されたTemelらの先行研究に対して、各地域での実臨床でのセッティングにおいて検証が進められているようです。もうひとつは、JORTC08試験(UMIN000017647)として実施したがん患者の神経障害性疼痛に対するデュロキセチンのRCTと次相試験のデザインについて、近畿大学所属で、現在University of Technology Sydneyに留学中の松岡先生より発表がございました。次相試験では、日豪の国際共同臨床試験を計画しており、緩和ケア領域では日本としては初となる国際共同臨床試験になるため、これまでのPaCCSCとの交流の次スーテジとして、All Japanでの実施体制を組み、実施が期待されています。

 今年のResearch Forumのホットトピックとしては、オーストラリアでは数年前から規制緩和された医療用大麻(Medical Cannabis)の臨床試験があり、食欲不振、痛みなどの症状に対して、臨床研究が進められております。日本においては、国内法の関係で、臨床研究が実施できない状況にありますが、海外では急速に医療応用に対しての規制緩和、研究が進んでいる状況にあり、日本においても、規制や研究の進め方に対して建設的な科学的議論をすべき時期に来ていることを実感いたしました。

 また、PaCCSCでは緩和ケア分野以外の支持療法領域に関する臨床研究についても領域横断的に推進すべく、Cancer Supportive Care Clinical Studies Collaborative (CSCCSC)というグループを設立させ、実施体制の整備を進めているようです。

 PoCoG訪問では、設立者のProf. Phyllis Butowと事務局長のDr. Joanne Shawにお時間を頂き、サイコオンコロジー領域で多施設臨床研究の基盤を築く過程で苦労した点など、今後のJ-SUPPORTでの体制整備で参考となる多くの助言を頂きました。そして今後、J-SUPPORT第3領域の姉妹グループとして、サイコオンコロジー領域の研究推進のために協力していくことになりました。また、昨年に引き続きPoCoGの関連部門であるQuality of Life Officeにも訪問し、Prof. Madeleine KingとDr. Rebecca Mercieca-bebberを交えて、研究協力を頂いている案件についての研究相談を行いました。Prof. Kingは、今年9月に来日が予定されており、東京大学と連携して企画しているPRO研究関連のセミナーでご講演頂く予定です。

 緩和ケア、心理社会的ケアそれぞれの領域で、オーストラリアの臨床研究グループとの友好、協力関係を築いており、今後は具体的な共同研究に結びつけていきたいと考えております。

 PaCCSC訪問松岡先生オフィス                   

University of Technology Sydneyの松岡先生のオフィスにて(松本先生、全田先生、松岡先生)

 

PaCCSC訪問松本先生発表

PaCCSC Research Forumでの松本先生の発表

 

 

University of SydneyのQuality of Life Officeでの記念撮影(King教授とRebeccaさんを交えて)