恒常的な多施設臨床研究体制を構築し、継続的にがん患者・家族のQOL向上をめざします!

病む人を支える、ケアする。医の原点でありながら、疾患の原因を追いかけた瞬間、原点を見つめる目、患者・家族を見つめる目の焦点がぼやけてしまった経験はないでしょうか?緩和ケア、精神腫瘍学、支持療法はQOL向上をめざすだけでなく、原点を思い起こさせる潮流ともいえます。これまで“病んだ人を支える”ことは多くの職種が様々な形で関与し基本のケアの一部として提供されてきました。しかしながら、がんの標準治療のように推奨できる治療やケアとして確立されているとはいえません。特に、がん治療中の嘔吐、しびれ、脱毛、がんによる倦怠感、痛み、不安、抑うつ、せん妄などの対策はガイドラインが存在していても充分なエビデンスによる裏打ちがないために、標準的な支持療法が医療現場に充分に普及できていない状況にあります。

 これら支持療法全般にわたってエビデンスに基づく標準的治療・ケアを確立していくことは、先進国としてのわが国の責務と考えられますが、現状は支持療法の臨床試験を実施する体制が整っていない、各症状評価を含むQOL評価法が確立されていないなどのインフラの問題が存在します。最近になって、豪・米などからハイボリュームセンターを含む多施設臨床試験グループからようやく報告が連続するようになりました。また、検証された支持療法を全国に導入し普及させるための体制のみならず、教育研修体制が必要です。遡れば、支持療法のニーズの経年的変化を的確に把握した上で計画的に支持療法の開発と普及体制が整備されていなければ、時代と共に多様に変化するがん患者・家族のニーズに到底対応できません。

 このたび、国立がん研究センターに支持療法開発センターが設置されたのを機に、恒常的な多施設臨床試験・臨床研究のハブとなるべく、J-SUPPORTは国立がん研究センター研究開発費(A-27-3)の支援を受けて設立されました。管理・監督ではなく初学者に基本からの支援を目的にしたメンターによる支援体制を特に充実させました。皆さんと共に支持療法の開発、QOL評価手法の確立、支持療法のニーズと提供の定時観測体制構築をめざします。ホームページをご覧いただいた皆様には、ぜひ、研究者間の交流を活発にするために会員登録をお願いしたいと存じます。全国の研究者マップを作成してJ-SUPPORT会員間の交流を深めたいと存じます。何卒ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

 最後に、J-SUPPORT設立までの道程で多大なるご指導、ご支援いただいた関係者の皆様方にこの場をお借りしてお礼申し上げたいと存じます。J-SUPPORTの呼称には、病む人を支える、支持療法開発、さらには研究者を支援するという、関係者の願いが込められています。J-SUPPORTは皆さんと一緒に恒常的な多施設臨床研究体制を構築し、継続的にがん患者・家族のQOL向上をめざします!成果と同時に多くの若手研究者の誕生を願ってやみません。

2016年3月
J-SUPPORT:日本がん支持療法研究グループ
代表 内富庸介